オムライスで有名な店の「オムレツサンド」は、ふわりと仕上げた紡錘形の美しいオムレツを、温めたパンの間にそっと挟んである。
食べるときは、この食感を損なわないように、パンを上下からつかんではいけません。
これ以上の圧力をかけてはいけません。
だからパンを左右に配置して食べるのです。
そうするとまず唇に、ふんわりとオムレツがキスをする。
次にむむっと飛び出した玉子の甘みが、舌に広がって、パンの味が追いかける。
パンにはバターも塗っていなければ、ケチャップもなし。
この上なくオムレツに肩入れしたサンドイッチなのです。
僕は後半になって、ちょっとだけ塩をかけてみる。
すると甘みが膨らんで、玉子が笑う。
そこで一緒に頼んだコーヒを一すすります。
この幸せは、なにものにも変えられません。