イタリア料理に行くと決めたら、まずしなければいけないのは、人選である。
カジュアルな店で楽しもうって日には、なおさらである。
気のおけない同席者を選ぶ。
友人でも同僚でも愛人でもよい。
ただし気のおけないとは、食いしん坊で飲んべえであることであることを指す。
なぜならイタリア料理店では、すべからく享楽的にいきたいからである。
できれば、ジョークの返しがうまく、笑顔がきれいで、ちょいとスケベな話もいけちゃうよという人が、なおいい(自分自身も努力しましょう)。
次に肝要なのが、時間である。
余裕がないのはいけません。
閉店間際も落ち着きません。
閉店が早い店も食事時間に制限がある店も選びません。
ゆとりをもって、三~四時間でも楽しむつもりで、出かけよう。
さあ店も人も決まった。次は予約だが、軽々しく考えてはいけない。
席の確保だけでなく、店と客との情報収集戦なのである。
まず相手が余裕のある、ランチの直後か夕方に電話する。
名を告げたら、店を選んだ理由も伝えよう。「知人からすすめられて」とか、「雑誌を見て、どうしても食べたくなって」とかネ。
これで相手も自分も気分高揚。
そこで反応を見るや、人数、日付、時間とともに、席も望んでしまいましょう。
「食いしん坊の友人と、屈託なく過ごしたいので」などと伝える。
これで相手も、かなりあなたの情報がインプットされるはずです。
ここまで来れば、もう楽しめる準備の七割は万全。
あとは店内での実践である。
さあ入店。「うんと楽しみにきました。よろしくネ」の思いを込め、とびきりの笑顔を作って、挨拶したら、席についてメニュー選び。
レストランで最も胸ときめく瞬間であります。
そう、食前酒も忘れちゃいけない。
定番のスプマンテやプロセッコ、、ビールでもよし。
ソーダ割なら、カンパリやチンザノ、ガリアーノやアマレットもよし。
事前にバーで予習をし、「チナールをソーダ多目で割って下さい、スプマンテをオレンジジュースで割って(スプロッシというそうな)」。なんていえると、ちょっとカッコいいでしょ。
最初からお酒はという向きには、サンペレグリーノやパンナといったミネラルウォーターを、ボトルで注文するのもシャレている。
さあメニューに戻ろう。
僕の場合、まず選ぶのが、パスタ類である。
なぜなら、そこに最もシェフの才が発揮されている場合が多いからである。
それに、スプレッツァプレッティ、メッツァルーナ、リチャッレなど、なじみのないパスタ名があれば、サービスの人に聞いて、幸せの協力者としての道筋を作りやすいからである。
生パスタや知らないパスタがあれば、優先する。
こうしてパスタを選んだあとは、食材や味付けが重ならないよう、前菜、主菜と選んでいく。
その他食中の留意点もあるが、紙面がつきた。
あとは自由闊達、思う存分楽しもう。
最後に、そんな気分のあなたを、すぐれた料理と暖かいサービスで後押しする店をご紹介したい。
食材に長けた、池尻「パーレンテッシ」。丁寧な仕事が光る、用賀「グランデママ」。
肉を食らうなら、恵比寿「フレーゴリ」。お楽しみあれ。