グイッ。
その肉に歯を入れようとすると、一瞬抵抗された。
赤身はおろか、脂身までが、噛まれることを拒むような食感がある。
ロースならまだわかる。
だがこれは、バラカツ、バラ肉のカツなのに、そんな凛々しい食感があった。
アスリートなのだろう。
北海道の大草原に放し飼いにされ、好きなように餌を食んできた豚肉の、生命力なのか。
咀嚼力を喜ばせるバラ肉は、初めてである。
脂も締まり、噛んでいくとやがて、甘い香りが立ち昇る。
わずかな赤身からは肉汁が滴り、鼻息を荒くさせる。
直前に塊から切り出した、様似ポークのバラ肉とんかつは、全国でここでしか食べることができない。
名古屋「とんかつ みとん」にて
聞けばこの豚くん
荷前日まで山を下って小川まで水を飲みに行き、そのまま小川でブクブク遊んだり、小枝を咥えて自分らで作った山道を登ったり、平坦な場所は寝床くらいな場所で育ったのだという。
で全身の筋肉(赤身)はもちろん脂肪(白身)までも使って育って来たのだろう。