わくい亭に出かけるといつも悩む。

食べ歩き ,

わくい亭に出かけるといつも悩む。

はてきょうは、どの料理で飲んでやろうかと。まずは鉄分の香り高いづけと、脂がのったシメサバを常温の酒でやって、次に、ふんわりと溶けるように崩れる穴子と里芋の煮物で、ぬる燗を飲もう。箸を入れた瞬間、玉子の甘い湯気に顔が緩む、ねぎ玉もかかせないぞ。香ばしい衣に歯を立てると、甘い肉汁が口の中にあふれ出るメンチカツは、塩をふってビールを飲むか。いや醤油と辛子をつけて酒を飲んでもいいぞ。おっと白子ポン酢がある。こいつはじっくりぬる燗だな。ああ生ハムのサラダを忘れてたと、酒飲みの心をぴたりとつかむ料理に、思いは千々に乱れる。だが、こうして飲む酒のおいしいこと、楽しいこと。
そんな気分を清潔な店内と明るく威勢のいい女将さんが盛り立てる。さあ、速く仕事を片付けてかけつけなきゃ。