“ほんばい”はご存知だろうか?
声明の一種の梵唄でも、ブラフマンのアルバムでも、インドカレーのボンベイでも、シドニー郊外のボンダイでも、猪木のボンバイエでもない。
「盆梅」と書く、盆栽の梅の木である。
宮尾登美子の小説「陽輝楼」の舞台となった、高知の料亭「得月浪」には、錚々たる盆梅があった。
なにしろどれも樹齢200年から300年という怪物である。
これだけの年月を重ねても、なお可憐な花を咲かせるもの、花は咲かず、表皮もささくれだってもなお、生きている樹と様々である。
時空を重ねた老木は、世の無常と人間の脆さを教えて、静かに呼吸していた。