ふく福。

食べ歩き ,

四つ葉でふぐ食べて悟ったね。安いふぐ食うんだったら他の料理食ったほうがいいって」。
こう、うそぶくのは、自分を欺くためである。

「ほんとは食いたいけど、財政的にがまんせざるを得ない」事情に、正当な理由をつけるためである。
正当なるゆえに、もっともな説明もつく。

「四つ葉では、1.8キロくらいの天然シロを二人で食べる。これって市場値で約三万。高いときゃ四万だ。だからちゃんとしたふぐ食べるにゃ、最低四万はださなきゃいけない」。

うむごもっとも。
でも食べたいよ。
「じゃあ、ちょいと「味満ん」でもいくか」というわけにはいかない。
覚悟が必要である。

もともとふぐなんて高級魚じゃなかった。
とらふぐじゃなく しょうさいや真ふぐを気軽に食べてたもんだ。
それはそれのよさがある。
でもいまは、どこもとらふぐ。

しかたないからといっても、「た●●く亭」とか「と●●ぐ亭」といった、水槽で唇を赤くしたふぐが漂う店にはいかない。
8年前ほどに付き合いで行って、北風吹いた。。
まずくはないが、切なくなる。

2006年度は食べていない。

で、飲んでも一人一万五千円くらいでいくかと思うと
こりゃあ 浅草「牧野」でしょう。
新宿「三浦屋」もいいけど、少し雑。
神楽坂「山さき」の味噌仕立てはたまらないけど、少し覚悟がいる。

「牧野」は女将がいい。 旦那がいい。
座るならカウンター。

「焼く? それともみぞれ挟む?」
刺身を食べ終わりそうになると、女将が聞いてくる。
「最近は養殖の方がうめえふぐがいるんだよ」と、旦那さん。
「皮もうまいよ」と、
鍋に、みかわやとうとうみをぽんぽん入れてくれる。
「どの白子がいい?」と見せてくれ、
焼き白子のうまさに高揚しながら

「鍋と雑炊にも入れてくれるかなあ」と甘えれば、
「もちのろんよ」 と、大きいの入れてくれる。

「これはサービスなんだけど、こればっか追加する人がいて困っちゃうの。ハハハ」。
と、雑炊にいくら醤油漬けを入れてくれる女将さん。

毎晩「つきじ やまもと」に行けるような金持ちになっても(なるわけないが、文章の流れ上、書いてみた)、
まちがいなく、この店には通っちまうね。