それは甘くないのかもしれない。
しかし一口食べると、口の中にチョコレートの甘い香りがあった。
「肉を食べて、内蔵を食べて、チョコレートを感じるなんておかしいだろ」。
頭の中にいる常識が言う。
しかしレバーなのに、ハツなのに、どこまでも甘美なのである。
今日届いたばかりの近江牛のレバーとハツを叩いて、少しの香味野菜と乾燥ローズマリを入れて煎り煮にし、パンの上に乗せた。
写真でご覧のように、頬ずりしたくなるほど輝いて、今すぐ生で食べたくなるほど美しい、新鮮なレバーだからこそ生まれた味なのだろう。
しかもよくよく噛み締めると、甘い誘惑の底に、動物の雄々しさが潜んでいる。
たまらない。ああ、たまらない。
食べるほどに心を溶かし、愛を深めていく。
亀戸「メゼババ」にて。