かき氷を、あまり食べない。
なぜならエロくないからである。
しかしこれは、つい頼んでしまった。
「桃風味のかき氷、ココナッツアイスとカルヴァドスのシロップ」。
桃やココナッツアイスという文字より、カルヴァドスという文字に惹かれて、頼んでしまった。
酔っ払いおじさんなら当然である。
かき氷の下には桃のリキュール、上にはココナッツのアイスクリームが乗っている。
その上からパティシエがカルヴァドスのシロップをたらりんとかけて、
「あとはお好きなだけおかけください」という。
かけちゃうよ。全部かけちゃうよ。
リキュールでなくカルヴァドスというのがいい。
甘い香りに頼っていないのがいい。
甘く媚びているばかりでは、色気は醸せない
凛とした品性と強さを秘めているからこそのエロである。
食べれば案の定、桃の甘い香りにカルヴァドスの風味が溶け合って、夜になる。
こいつは、カルヴァドスとクレーム・ド・ペシェ、ココモ、生クリームで作る「ノアノア‘タヒチ語でかぐわしい香りの意味」」というカクテルの別の姿なのであった。
やはり夜。
虎ノ門「ピルエット」にて。
閉店