人形町「松浪」
人形町の裏路地に、往年の下町風情を漂わす小粋な一軒家。入れ込み式の座敷では、カップルや家族連れなどさまざまな客で賑わっている。
お好み焼き元年ともいわれる昭和二十六年、もんじゃ焼き人気の只中で開店。先代が、他に例をみない独自の江戸前お好み焼を発案した。その特徴の一つが生地。生地がきめ細かく、ホットケーキのようにふんわりと軽い。もう一つの特徴が具の組合せ。たっぷりのねぎと煮あさり、玉子の「松浪焼き」、牛ひき肉のうまみが生地いっぱいに広がった、キャベツ、玉子による「芳町焼き」、ねぎに桜えび入りなど、ソースより醤油が合うお好み焼きがそろう。中でもおすすめは小柱、三つ葉、かまぼこ、玉子入りの「浪花焼き」。口に運ぶと、三つ葉の爽やかな香気、かまぼこの弾力に富む歯応え、小柱の甘みが流れ出て、おもわず頬がほころぶ。いずれも日本酒の肴としても好相性。お好み焼きは七百円〜。
その他、バターと醤油で焼く肉厚の椎茸やはまぐり、鴨の脂とで焼きレモン醤油でいただく合鴨といった鉄板焼き、キャベツと味付けひき肉をラードで炒める「キャ別ボール」六百円、三つ葉、かまぼこ、椎茸、キャベツ、桜えび、ひき肉、紅生姜による「五目焼きそば」九百円、生地にあんこを混ぜた「くろんぼ焼き」、「あんず巻」などもおすすめ。
天現寺「やきやき三輪」
大阪堀江の鉄板料理専門店の東京店。九十六年開店時より、ついに東京でも本格的な関西風お好み焼きを楽しむことのできる店ができたと、ファンが急増。現在でも連夜満席の盛況。
お好み焼きかねぎ焼きが選べる「三輪スペシャル」千五百円は、おでんのジャガイモを鉄板の上でつぶして広げた生地の上にのせ、さらに油かす(揚げた牛の大腸)、イカ、エビ、牛すじを加える。ふんわりとして旨味がある生地に、ジャガイモのほっくりとした甘み、カリリとした食感の油かす、ゼラチン質のうまみたっぷりの牛すじなどが加わった豊かな味わいは他店にはない魅力で、虜となってしまうは必至。おでんにすることによって甘みと旨味が出たじゃがいも、じっくり煮込んだ質のいい牛すじなど、丁寧で計算された仕事が心にくい。自家製マヨネーズと、醤油、レモン汁、青海苔、粉がつおであっさりと食べる「ねぎ焼き」もぜひ。さらなる名物が「キムチ入りそばめし」千三百円。若主人があざやかなコテさばきで仕上げる「そばめし」は、同量のご飯と蒸しそばを炒め合わせ、コテでそばを細かく粉砕していく。ご飯粒と同寸になったころを見計らって、酒、天カス、牛すじ、キムチ、鰹節と、寸前にさっとキムチを潜らせた醤油を投入。キムチをコテで粉砕し、最後に青ねぎをたっぷりとかけて完成。カリッとなったそばともっちりとしたご飯が合わさった不思議な食感。辛味や塩気が渾然となった味わいにつき動かされ、一気に食べ終えてしまう。その他厚切り牛肉、タコ、エビ、ホタテ、もやし、ニラ、ニンジン、豆腐を炒め合わせた「コロコロミックス」二千四百円、ホルモンとキムチ、ニラ、コンニャクを炒め合わせた「ホルモンキムチ」など、庶民の活力がしたたかにみなぎった料理がそろう。
西麻布「燦糺」さんきゅう
古木で囲われた隠れ家風外観の木戸を潜ると、店内は、堀ごたつ式の広々とした空間。アイデアにあふれたお好み焼きがいただける。例えば「広島産生がき香草パン粉焼き」は、たっぷりとかきを入れた生地にパン粉と香草をまぶしてカリッと焼きあげたお好み焼き。香草が清々しく、かきの滋味が生地に溶け込んでいてなんともうまし。タルタルソースが添えられるが、なにもつけずに食べることをおすすめする。また「鳥取大山産地鶏親子玉お好み焼き」は、鳥もも肉一枚を入れたお好み焼きに目玉焼きを添えたもの。その他「フレッシュモッツァレラと生ハム」や「カツレツのお好み焼き」など独創的。しかし一方で「豚玉」は、油カス、牛すじ、味付けコンニャクが入り、生地もふっくらとして生地自体に旨味があり、関西お好み焼きファンを裏ぎらない。その他、「南部鉄で焼く鉄板焼きや肴となる料理も豊富。お好み焼き九百円〜「とん平焼き」九百円。「サーロイン鉄板焼き」二千三千円。
麻布十番「以登はん」
麻布十番の庶民的お好み焼き屋。牛すじ、コンニャク、少なめのキャベツ、玉子、たっぷりの青ねぎ入りの「神戸風お好み焼き」千二百円は、小麦粉に山芋を混ぜたもっちりとした食感が特徴で、生地自体にほんのりとした甘みがある。辛いドロソースもいいが醤油でぜひ。「韓国風お好み焼き」千百円は、牛肉、ニラ、あさり、かき、玉子入。平たく薄く焼き、酢醤油ベースのタレで食べる。またもんじゃもあり、生イカ、桜えび入の「ミニもんじゃ」五百円をお好み焼きの間にたべるのも一興。「焼きそば」は、静岡富士宮の特製麺を使用。中太のたくましい麺でよく焼くとおいしい。干しイカ、干しエビ、あげ玉、ねぎいりで下町風。その他「タコガーリック」七百五十円など、鉄板焼きも充実。
白金台「甚六」
お好み焼き屋とは思えぬモダンな内装、黒シャツ姿できびきびと働く店員。若者客中心に深夜までにぎわう。 まずは名物「甚六ギョーザ焼き」千三百円を。豚挽き肉、ニラ、キャベツ、生姜を、生地に醤油とともに混ぜ薄く平たく焼きあげ、酢醤油と辣油につけて食べる料理で、ビールの相手に最適。次は「タコ焼き」六百円。プリッとした質のいいタコとねぎ、紅生姜、桜えび、青海苔入の天かす、味付けコンニャク入りの大きなタコ焼きで、カリッと焼きあげられた外皮に歯を立てれば、とろりと生地が流れ出る。醤油ベースのタレと辛味油が隠し味として入っており、ひりりと辛い。「お好み焼き」では、スジキムチがおすすめ。牛すじ、キムチ、ジャガイモ入で、具は少なめで玉子の入らない生地自体の味を楽しむ。その他やさしい味噌味に仕上げた、牛すじの煮込み「土手焼き」六百円もおすすめ。しめは「かき氷黒蜜」四百円で決まり。
渋谷「七福」
毎晩行列ができるほどの人気広島風お好み焼き屋。
人気の理由は豊富な品揃えと独創性。「肉玉そば七福スペシャルB」千六百五十円は、クレープ状に伸ばした生地に、粉がつおをふり、炒めたキャベツ、もやし、天かす、青ねぎをのせ、昆布粉、豚バラ肉をのせて生地を少したらして裏返したら別に炒めた焼きそばの上にのせ、さらに玉子の上に乗せて裏返し、オタフクソースをたっぷり塗った後、別に炒めておいたカキ、ホタテ、アサリ、をトッピングし、トマト、サラダ菜を添えたもの、実に盛りだくさんな要素だが、甘いソースを引き締めるトマトの酸味、大量キャベツの甘み、貝類の旨味が次々と訪れて引き付ける。「肉玉そばカレー」九百五十円は、そばにカレーソースをからめ、皿に盛りつけたのちたらりとカレーソースかけ回した人気の一品。溶いて焼いた玉子の甘みと下に敷いたキャベツの効果がいい「とん平焼き」七百五十円もおすすめ。
南行徳へ移転
神田「八十八」
混ぜ焼きに広島焼き、豊富な鉄板焼きが人気の店。
名物「八十八天」九百円は、味付け牛挽き肉と青ねぎを玉葱とキャベツ入の生地に混ぜて長方形に焼き八等分し、醤油とマスタードで食べるもの。玉葱とキャベツの甘みにあふれたやさしい味わい。豚バラ、白菜キムチ、天かす、キャベツ、紅生姜入の「豚キムチ天」九百円は、山芋入のふんわりとした生地がいい。その他タルタルソースで食べる、通常の生地にほうれん草、チーズ、ベーコンを入れた「ポパイ天」も人気。
閉店