〜歯医者は秋田に限るの巻〜
前歯が抜けた。
三日前、上の差し歯二本が、仲良く抜けた。
おそらく、羽田空港ラウンジで食べた堅焼き煎餅が犯人である。
いや正確には、普段食べない煎餅に手を出した、食い意地が犯人である。
飛行機を降りた瞬間からぐらついて、ホテルに到着した瞬間にぬけた。
これは困る。
これから秋田で三日間食べ歩いて金曜日の夕方に帰り、東京で中華を食べる予定があるからである。
その後、歯医者も三連休の間に、土曜日昼中華、夜フレンチ。日曜日夜中華。月曜日昼とんかつ、夜とんかつという予定なので、誠に困る。
歯医者にメッセをしたら、アロンアルファで応急処置をすればいいということなので、やってみた。
しかし考えてもみてください。
鏡で見ても結合部は見えない部分に、正確な角度ではめ込まないといけない。
かなり高度なテクニックが必要となる。
何度か角度を調整して、ぱかっとはまる。
やった! と思った瞬間に、歯から指が離れなくなった。
漏れたアロンアルファ液は、律儀に親指と歯を、くっつけたのである。
このままでは、親指の爪をいつも噛んでいる甘えん坊である。
慎重に慎重に歯から指を剥がしたが、その軽い衝撃で、また歯が外れてしまった。
これを何度か繰り返すもうまくいかない。
しまいには、義歯にアロンアルファがこびりついて、汚くなってしまった。
記念に写真に収めてみたら、歯のミイラである。
歯の漬物である。
しかも接着面が凸凹になってしまったため、余計につかない。
しかたなく、前歯二本抜け状態で食べていく決意をした。
その後、天ぷらも、割烹たかむらも、焼き鍋も居酒屋も、シメラーメンも、すべて前歯なしで食べた。
けつこういける。
このまま前歯二本なしでも生きていけるんじゃないかと、思ったほどである(ウソ)
しかし人間誰しも、経験してみないとわからないことがある。
無理。絶対無理と思う料理があったのである。
以下次号。
〜歯医者は秋田に限るの巻〜VOL1
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