〜フィナンツェーラ〜
鳥のトサカ、モミジ、ハツ、レバー、鳥もも肉、豚肉、リードーヴォー、ロニョン、ジャガイモ、人参 豆。
フィナンツェーラは、ピエモンテ州トリノの郷土料理である。
家庭では、手元にある内臓と野菜やきのこなどをぶっ込んでそのまま煮込むのだが、リストランテだとちと違う。
小麦粉と炒めて匂いを弱め、マルサラをいれて煮込む。
じっくりと煮込まれたそれを一さじすくって口に運ぶと、舌をねろりと抱きすくめた。
上質な白湯スープをそのまま凝縮させたような、優しさと濃厚がない混ぜになった境地がある。
コラーゲンの旨味を引き出す精妙な塩加減によって、丸い丸い滋味が口の中を流れていく
「ハァ〜」言葉にならぬ充足が、ため息となってこぼれ、トリノ人でもないのに、懐かしい気分がせりあがる。
クニュ、ふわっ。シコッ。とろり。
それぞれの部位も別々に加熱してあるのだろう。様々な食感が歯を喜ばす。
「美味しい」というと、「僕の得意料理なんです」。
シェフは子供のような笑顔を浮かべて喜んだ。
「でもうちでは内臓料理はメニューに載せても出ない。トリッパでさえ出ない。久々に作れて嬉しかったです」。
そう。みんな奥野シェフを喜ばせに行かなくちゃ。
「ブリアンツァ」にて。