日本人が和菓子というものに、自然を託してきた美学が、ここに息づいている。
小布施から望む雁田山にちなんだ「雁の山」は、小豆あんを山に、裏ごしした栗を空に見立てた生菓子である
切って口に運ぶと、小豆あんの甘みが広がって、栗の香りが、雲のようにたなびいていく。
小豆あんの甘みは、決して栗の甘みを邪魔することなく、優しく見守る。
蒸して裏ごししただけの栗は、小豆あんの思いやりに感謝して、そっと微笑む。
両者の愛が心を包んで、軽くなる。
ああ、なんとエレガントな生菓子なのだろう。
エレガントとはまさに、食べた瞬間に、現実から解き放つ優雅であり、自然の厳しさと美しさを教える品位である。
この生菓子は、その真実を、静かに証明している。