「うまいですよぉ」。そう言ってマダムは皿を置いた。
ああこの人も、おなじ食いしん坊で、フランス料理が好きなんだなあ。
アンドゥイエットはお腹を膨らませ、腸の焼き目を自慢しながら皿に鎮座する。
まずは端っこからいってみよう。
「ううっ」切って食べて、唸り、だらしない顔となった。
微かに甘い、少しいやらしい腸の香りが、口から鼻に抜けて、食いしん坊のツボをぐさりと刺す。
「うまいなあ、うまいなあ」と、つぶやきながら、次は胴体にナイフを入れる。
細かく切られ、みっちりと詰められた、大腸、小腸、胃袋が顔を出す。
旺盛な豚の食欲が育んだ、健やかな内臓の滋味が、舌全体に広がって、喉へと落ちていく。
ここで我に返り、赤ワインをグビリ。ジャガイモのピュレを一匙。
ふふ。まだまだあるもんね、アンドゥイエット。
誰にもあげない。僕だけの宝物。
六本木「ブーケ・ド・フランス」にて。