Malabar マラバール

食べ歩き ,

Malabar マラバール
「マラバール」のペドロ・ミゲル・スキアッフィーノシェフは、この10年をペルーアンデス山脈とアマゾンでとれる食材の発掘と研究に費やしてきたという。
2015年度ラテンアメリカのベストレストラン50、第20位。のダイニングはシンプルだが、ウェイティングルームは、NYにあってもおかしくないようなセンスがある。
メニューはアラカルトのみだったが、浜田君のレポートで予習済みゆえ、「テイスティングメニューはあるか」と聞けば、「ハイ。7皿の用意があります」と、すんなり答える。
Tasting Menu�テイスティングメニュー
yucca bread� 三種類のユッカ(キャッサバ)で作ったパン、ユッカとチーズのクリスピーチップ、ホワイトユッカのパン、ユッカのパン(ポンデケージョ)。ユッカの優しい甘みが生きていて、ほのぼのとしたおいしさがある。ポンデケージョでおなじみな、モチモチとした食感も微笑ましい。
添えられているのは、チェスナッツとチーズのクリーム、アーモンドチップのせ。黒いのは、ユッカ・ブラヴァ(ユッカの根の仲間で毒性が強いラ・ユッカ・ブラバ。毒を取り除くため、すりつぶした根に水を混ぜ、6日間布で濾してからペーストをし、ヘビのような形のヤシの葉(マタフリオと呼ばれる)でしっかり絞る。その濃厚な液体は、リッチな魚用ソースのベースとなり、絞りかすは小麦粉のような粉末となる)を発酵させて作ったアヒ・ネグロ。
緑のものは、茄子にケールペーストをあえたもので下のケールのはごとくるんで食べる。茄子のほの甘味に青々しい香りがかぶさって、新鮮な体験をもたらす
Fresh hearts of palm: Brazil nut oil, farofa�
 椰子の芽の料理。パスタ状にスライスされた椰子の芽は、淡い淡い甘みと微かな苦みを感じる、手応えの薄い食材ながら、ブラジルナッツのオイルとファローファ(キャッサバ粉)をかけて和えただけでどうだろう。ナッツの香ばしさとファローファのうま味のなのだろうか(それもさして強いものではない)。カラスミにも似た太いうま味を感じる皿になっている。素晴らしい!
Pachikey scallops
帆立とイエローチリ、アヒ・アマリージョのソースと燻製したアボカド。表面だけさっと火を入れた帆立の焦げ香と生のしっとりとしたいやらしい食感に、葷成功がほんのり漂うアボカドのコク、アヒ・アマリージョのうま味の三者が美しく共鳴する。見事。
quinoa salad: Native potatoes, tamarillo, Andran herbs and pickled mushrooms
キノアはどこがおいいのかしらん? まあ健康にいいから食べているのね。と思っていたが、裏切られた。小さい粒々を噛み締めてみると、穀物的な素朴なうまさがある。そこに、芋類の実直な甘みが重なり、タマリロ(約2~8cm果実)の、パッションフルーツ香とトマト風味、キウイのっような甘酸味、微かなとピリッとくる辛味が見事にアクセントする。pickled mushroomsと書かれていたが、すいません。僕にはどこに存在していたのかわからなかった。
All Corn
クリスピーコーン、ベビーコーン、ペルー原産コーンの盛り合わせ。クリームとカレーの風味。クリスピーコーンを手でもってがぶりといく。ペルー原産コーンのむちっとした食感とジャガイモに似たほの甘さ、ベビーコーンのつたない甘い香りにシャキッとした食感、クリスピーコーンの痛快な食感が一気に弾けて笑みがこぼれる。それらをクリームのコクとカレーの香りが持ち上げる。その微妙な量でバランスが取れている点もいい。コーンだけで、これだけのまとまりを見せる料理も面白い。
Escolar
一口食べた瞬間に思った。「これは鯖の味噌煮だ」と。脂がほどよくのって、舌の上でしっとりとホグラル味わいは、まさに鯖である。そしてソースは先のユッカ・ブラヴァであると思われるが、味噌煮的なソースのうま味がある、当然ながら御飯が少し欲しくなる。後ろに添えてあるのは、カブとルッコラにカイランと同じような味がする青菜の炒め。
ちなみにEscolarは、深海魚でホワイトツナとも呼ばれ、日本でも静岡県沖に生息し、アブラソコムツと呼ばれる魚。
チアシードとヨーグルト、シリアルのデザート
ヨーグルトの酸味がいい、爽やかなデザート。
全体的に料理は軽く、味付けも淡く適妙で、なにより地元野菜や穀物への深い愛が伝わってくる。ヘタにユニバーサルにせずにこのままのモダンさで突き進んでほしい。
昨日のガストンに比べると、肉もなく、量も少ない。だが3時に食べ終わって、現在九時の状態までまったくお腹がすかないのは、チアシードのせいだろうか。それもまた計算なのか。
悔しいので? これから、マラバールの支店でよりアマゾンの食材に特化した、「アマズ」に行くのだ。