ホームを降りだ瞬間、不安になった。
こんなところにレストランはあるのだろうか?
小高い駅から見回しても、民家はまばらにしかない。
飲食店はおろか、コンビニもない。
駅前の道を降りていくと、青年2人が迎えにきてくれた。
2人は修行先の京都で出会い、飲みに行っては、料理の話や夢を語っていたという。
そのうち1人が働いてたオーナーから、古民家を買ったのだがどうしていたのかわからないという話を相談受けた
「レストランをやろう」。彼は咄嗟に思いついた。
そしてスロベニアで働いていた友人に連絡した。
彼は直ちに日本へ戻り、合流して、レストランを0から始めることになった。
「INA」の営業は、週三日で、1日一組しか迎え入れない。
それ以外の平日は、ラボで、ひたすら料理を作っているという。
奈良出身でもない2人の青年は今、奈良の食材を輝かせたいと、奮闘している。
軽やかな猪のフリット、大量の芹が蛤の色気をくすぐるお椀、中に詰めた山菜が天魚の住む場所を想起させるフリット。
持てる技術を使いすぎず、なるべくシンプルに料理して、食材の出会いを大切にしている。
そんな料理だがらこそ、素直に心に落ちていった。