門上様、僕は炒飯といえば思い出すのが、炎の料理人、故周富徳氏です。
炒飯を作る際に、米を宙高く舞い上がらせる姿に憧れて、何度も挑戦したものです。
しかし後年なってあるシェフより、あれはテレビ局が頼んだパフォーマンスで、本来は鍋肌に米をつけて焼いて、香ばしさを出してこそ炒飯だと教わりました。
炒飯人生で、これが第一の衝撃でしたが、第二の衝撃が、今回の炒飯なのです。
食べれば、黒酢のコクと丸い酸味をまとった米がふっくらと甘味を膨らまし、そこへ米粒大に切られたもやしが、シャキッと弾む。
その味わいのバランスや食感の妙に虜となって、レンゲを持つ手が加速していきます。
しかも不思議なことに、黒酢という液体が入りながらも、ベッチャッとはならず、米がふんわり、しっとりと舌に滑り込む。この辺りの軽やかな色気が、とてもにくい。
聞けば、黒酢はそのまま使わずに、生姜に漬けたものを使い、もやしにその水分を吸い取らせているのだとか。
うんやられました。
でも文だけでは伝わらない。是非一度食べてください。