三田「コートドール」

至純。

食べ歩き ,

「きれい」。
一口食べた友人が、思わず囁いた。
「鹿とフォアグラのテリーヌ」である。
鹿肉と「きれい」は、結びつかないように思う。
だがそのテリーヌは、鹿の鉄分を感じさせない。
滋味が晴れ渡り、山奥の湧水の如く、澄んでいる。
やがてフォアグラの脂が甘く香り、舌の上でふんわり溶けゆく。
後から、鹿がさらりと追いかける。
そこには、斉須シェフが探り当てた、鹿の至純があった。
気高き命が持つ、「きれい」があった。
塩気は淡く、淡く、一層鹿の美しさを引き立てている。
だから、白ワインが似合う。
赤ワインではない。
繊細な鹿の味わいを、白ワインが滑らかに抱きしめる。
僕らにできることは、その出会いにうっとりと目を閉じ、微笑むだけである。
三田「コートドール」
「鹿のテリーヌとフォアグラ入り」