秋田「f」

物語はウニで締めくくられた。

食べ歩き ,

物語はウニで締めくくられた。

これがデザート、ドルチェである。

砂糖を使っていない、ドルチェである。

炒めた赤玉ねぎの上にウニを乗せ、その上に塩だけで整えたとうもろこしのジェラートを乗せる。

三者を一緒にして、く口に入れる。

まずとうもろこしが来た。

太陽の力を取り込んだ甘みが現れ、次に玉ねぎの濃密な甘みが追いかける。

そして最後に、ウニの甘みが広がった。

三者三様の甘みはなぜか、食べるたびに、順番を変えて、舌を翻弄する。

やがてそれは一つとなり、まだ見ぬ宇宙を作り出すのだった。

皿の上には、片面だけ焼いたのどぐろが乗っていた。

下には細かく刻んで合わせた、桃と茗荷、ミントが敷かれている。

これらは付け合わせではなく、液体ではないが、ソースである。

一緒に食べれば、どうだろう、

桃の酸味が、茗荷の刺激か、ミントの爽やかな香りが、ノドグロ の強い脂分を和らげ、エレガントに変身させるのであった。

平茸のトンナレッリである。

手打ち麺には、平茸だけが、炒め合わされている。

隠し味にブロードが使われているのかもしれないが、よくよく観察しても、その気配はない。

平茸だけの旨みと香りを、パスタに纏わせてあるに過ぎない。

その単純さに、僕らは集中して、意識を傾ける。

すると、決して饒舌ではない平茸の香りや旨みが、押し寄せる。

淡いが、食べ進むうちに、舌に積もっていき、平茸が群生する、森の奥へと誘うのだった。