中野「かさい」

通って35年。通算1200回。

食べ歩き ,

去年から始めた本連載は、残念ながら今回で最終回となってしまった。

そこで最後は、一番のお気に入りを紹介したい。

通って35年。通算1200回は食べた、中野北口駅前の「かさい」だ。 

気に入る理由は11。

1つゆに混ぜると後口が心地よい、おろし生姜が置いてある。

2麺が平打ちで太く、絶妙な食感と食べ応えを生む。

3若芽がうまい。厚くしなやかな三陸産・震災後に変わり「ご迷惑をおかけしますと丁寧な断り」。

4小盛がある。

5具を一つ増やすと、以降の具は10円安くなる。

6サービスがいい。立てば水が置かれ、無くなれば直ちに補充。カウンターは常に拭かれる。

7冷やしはぶっかけではなく、冷たいかけ汁がなみなみと注がれる。

8桜海老や青菜などが入った、お得なたぬき。

9冷やしたぬきにすると、たぬきに熱いかけ汁をかけて、なじみやすくする。

10自分の生活圏内にある。

11吹きさらしの外に面し、席数6席の、正統派立ち食いそば屋形状。

全種類食べ、落ち着いたのが、わかめたぬきそば380円である。

たぬきの油がコクを出し、そこへわかめが香る、ベストマッチである。

長年通っているだけあって、様々な人を見た。

一口すするたびに、うまいなあと呟き、隣の僕にも、「うまいよねえ」と、同意を求めた60過ぎのおっさん。

彼女を外で待たせながら、異常に食べるのが遅い、20代欧米系白人。

「なんでも食べな」と、一万円を財布から出した、黒皮ジャン30代男と、舎弟二人。

いなりを、温かいそばつゆに浸けて食べている、30代サラリーマン。

いつも思う。たった380円で幸せになれる先進国は、どこにあるのかと。食べるたびに、日本の先進性を痛感するのだ。

短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。またどこかの立ち食いそば屋で会いましょう