ジュワジュワッ〜!
中国料理のおこげは、耳と目で楽しみ、嗅ぐことで喜び、噛んで胸が高まり、味わって幸せになる料理である、
五感を刺激し、おいしさが重なっていく料理だが、中でも、音で楽しむという感覚が、他の料理にはない魅力だろう。
米を潰して平らにし、乾燥させる。
その音は、煎餅状になったおこげに、熱い餡がかかる時に派生する。
食べればまだカリカリの部分としなった部分があって、その対比が嬉しい。
しかし市販のおこげは分厚いので、しなってしばらく経つと、ぶよぶよになってあまりよろしくない。
「だから自家製で作るのです」。
「天外天」の中川さんは、そういって厨房で干してあるおこげを見せてくれたことがある。
その「天外天」は、コロナ時に店を閉めてしまい、今はない。
「中国菜ARATA」の中園健司さんは、「天外天」と「飄香」で修行された方である。
食べ終わって
「一番大事にされている料理はなんですか?」そう聞いたら、逡巡されることなく答えられた。
「おこげです」。
おこげを大切にしている料理人は、珍しい。
自家製のおこげは、米をペースト状にして伸ばし、二週間干すのだという。
修行先の「天外天」より薄い。
厚い鮑や干し貝柱が乗ったおこげに、熱々の餡をかけると、威勢のいい音が響く。
気持ちが思わず、前のめりとなる。
カリリ。
薄いので軽やかである。
そして餡にまみれ、しなったおこげは、ふんわりと舌の上で崩れる、可憐さがある。
この繊細なおこげを知ってしまうと、もう他では食べる