最後は、肉と炊き立てご飯だった。
肉はサカエヤの肉、米は東郷のコシヒカリを湧水で炊いたご飯である。
肉に、越前海岸で志野さんがつくる「百笑の塩」をたっぷりとつけ、肉を噛む。
猛々しい肉の味が立ち上がり、塩によって旨味が膨らみ出す。
ここですぐご飯を食べたくなるが、食べてはいけない。
噛んで噛んで、噛む。
通常なら25回ほど噛むと、次第に味は薄くなるが、この肉はそうではない。
33回ほど噛むと、小片となっていくが、味は消えない。
最後の最後の味を楽しみながら、肉が喉に消えていく。
後に残るは、肉の確かな余韻。
その余韻で、ご飯を噛み締める。
すると米が、一瞬笑ったような気がした。
福井坂井市「むつのはな」にて