親子の情

食べ歩き ,

シコッ。
その魚は、歯の間で悶えると、なめらかに消えていった。
清流を泳ぎ抜く鮎は、アスリートである。
この身の強靭さが物語っている。
その中にそっと脂を潜め。ほのかな野生の香りを漂わす。
味は淡い。
噛んで噛んでいくと、微かな滋味のようなものが顔を出す。
最初は、酢に漬け、次は子うるかを乗せて食べる。
うるかの練れた塩気によって、塩焼きにされた時に感じる凛々しさが、ふっと現れたような気がした。
それは親子の情だったのかもしれない。
「比良山荘」の全料理は、別コラムにて