海の掃除屋

食べ歩き ,

海の掃除屋といわれる貝は、様々な香りを孕んでいた。
甲殻類の香りのようであり、海藻のような香りであり、海そのものの香りのようであり、海底の豊穣が混沌となって花開いていく。
だから噛むごとに興奮していく。
「おお」
「うーん」。
「ああ」と、唸りながら、興奮していく。
ゼラチン質に富んだ、粘り気のある肉体を噛みしだくと、様々な香りが鼻に抜けていくのである。
茹でたテイバイ貝の生きる執念を感じる味わいに、やられた。
バイ貝には、数種あって、よくおでんなので見かけるのはマバイ貝で、刺身に向くのは青バイ貝だという。
青バイ貝の殻は簡単に割れるが、テイバイ貝の殻は硬くなかなか割れない。
つまりそれだけ筋肉質であり、ゼラチン質があり、うま味が濃いのである。
金沢「めくみ」にて。
全料理は、別項にて