下町酒場探検

食べ歩き ,

以前よりの懸案事項であった下町酒場探検を敢行した。隊長はわたし、隊員はマイミクゆかちんと友人マキちゃん。

いずれもたくましい胃袋と強度なアルコール摂取能力を持つ、頼れる隊員である。

まず向かったのは、東十条の「埼玉屋」ていう店で、都内屈指の焼トン屋だ。

座るなり、気さくなご主人がやってきて

 

「野菜食べる?  はい食べる」と、有無を言わさず注文が確定しちまった。

よっしゃあ、まずは生ホッピー(凍らした焼酎と生ビール!)で乾杯だぁ。

 

牛筋や大腸が入った「煮込み」や、千切りにしたガツやハツを唐辛子を利かせたにんにく醤油に漬けた「埼玉漬け」を食べながら、さあ焼は何にしようかと思案していると、気配を察したご主人がやってきて、

「焼は何にする?   俺のやり方で食ったほうがうまいよ」

「お願いします」

「よっしゃまかしとき」てなもんで

生焼の「レバー」

分厚く口の中で溶けちまう「上シロ」

「フランス料理風にやっつけたから」という、ガーリックバターを乗せた「チレ(脾臓)

こっくりと濃いタレがうまい「アブラ」

「これ岩中(?どうやら岩手産の豚らしい)だから」といって手渡された、脂が綺麗な「ネギマ」

ミディアムレアーの「ハツ」、

「はいタマタマちゃん」といって置かれた「ホルモン」

間に子袋とハツの刺身をいって

挟まれた肉に優しい滋味あり「軟骨」、

「シロ」、トマトソースを乗せて食べる「シャモ」と飛ばす。

鮮度よし、滋味よし、塩よし、焼きよし。一本百四十円均一さらによし。えらいぞ埼玉屋!

と調子に乗って生ホッピー二杯、純米酒を四杯ほどいく。

埼玉屋を出、歩いて五分、今度は昭和三年創業、十条の「斉藤酒場」だぁ。

「大衆酒場斉藤」と染め抜かれた大のれんをくぐり、引き戸をがらりと開ければ、昔がある。

船形天井の下、原木の形をそのまま残した大小の机に、客の愛着と酒が染み込んで、ひっそりと昔が息づいている。

「たまらないねぇ」。と、したり顔で一同にごり酒を注文。

定番のポテサラ、カレーコロッケ、串かつ、あら煮、たづくり、肉豆腐、しらすおろしと次々注文。

ふと店の片隅に酒の大瓶を発見、白い割烹着を着た女将さんに聞けば、

「どれくらい入ると思う?   五倍?    いいや違うの一斗瓶よ。昔酒屋をやっていた時の名残なの」。
言葉の端に気さくで温かい下町人情が滲み出る。
一同、埼玉屋で飲んできたことも忘れ、燗酒だ、泡盛だ、レモンハイだと一人四、五杯飲む。飲む。
古きよき時代のシアワセが、酔いと共に体に沈殿していく。
 

ああ気持ちよい。


「お勘定お願いします」
 

「四千九百円になります」。

 

ああ幸せ