大正14年創業、昭和の面影を残すビアレストランだった。
国際フォーラムに移転してからは、カフェ風になってしまったが、ここのカキフライでビールを飲むのが好きだった。
松本清張の「点と線」にも出てくる。
「じゃ、明日、三時半に、有楽町のレバンテにこいよ」
安田は、目元を笑わせながら言った。
翌日の十四日の三時半ごろ、とみ子がレバンテに行くと、
安田は奥の方のテーブルに来て、コーヒーを飲んでいた。
松本清張『点と線』より
カキフライ以外では、オムライスやナポリタンをよく食べたなあ。
オムライスでは、今から20年前に、こんな原稿も書いている。
「オムレツは酒の友でもある。その美しき例が、創業58年になるレバンテだ。完璧な紡錘形に仕上げられた麗しき肢体を割れば、半熟玉子とともにチーズが流れ出る。そこですかさず冷たいビールを流し込むのだ。ああ、なんたる幸せ。トマトの香りが生きたソースもオムレツと相性よし。今の時期ならカキのソテー入りも捨てがたい。バターと卵だけながら品があり、具をやさしく抱擁するオムレツ。その豊満に乾杯!」
その思い出深き「レバンテ」が3/25に閉店した。
理由はコロナによる倒産だという。
無念・としか言えぬ自分が、なんとも悲しい。