もうこれだけで笑うしかない。

食べ歩き ,

2019年4月1日 日本人の誰もが記憶するだろうその日の夜に、湯河原「富士屋旅館」でご飯をいただいた。
お品書きの冒頭に「新元号「令和」、御目出度うございます」とある。
ふふ。もうそれだけで気分が爽やかになった。
そして中央には「祝」の赤文字が記され、その下に鮑とある。
コースの最後にそのクライマックスはやってきた。
見事な鮑である。500g以上はあるだろうか。
これを酒が9割という鍋つゆにくぐらせ、肝のつゆにつけて食べるのである。
ははは。
もうこれだけで笑うしかない。
さっとつゆをくぐらせれば、磯の香りと歯ごたえが弾け、しっかりと火を通せば、噛むほどに甘みを感じる味となる。
今度はさっと、今度はじっくりと繰り返し、その度に盃を開けるのである。
最後は、あまった肝つゆを炊きたてのご飯にかけ、よくよく混ぜたら、肝茶漬けの要領で、ザブザブと掻き込むのである。
食べながら、申し訳ないという気持ちが湧いてきた。
しかし罪悪感が湧く食事は至福のときを連れてくる。
「富士屋旅館」全食事は、