今まで食べたトリュフのパスタは、いつも妖艶だった。
しかし、この料理は違う。
いや色気が漂よわないわけではない。
皿からは、トリュフがむんむんと立ち上がり、鼻腔を撫でる。
香りは、当然ながら我々を扇情しようとしている。
しかし食べると、色気は翳り、素朴な命の根源を感じるのである。
土臭いというか、トリュフの菌が土とまぐわい呼吸する気配がある。
それは渋く、野趣に富み、実直で、ほのぼのと暖かい。
トリュフ料理から感じさせる、華麗でエレガントな恍惚ではなく、今土の中を掘って生物を探し当てた、汚れた手を見つめる喜びがある、
それは、口にした我々をコーフンさせるのではなく、心を鎮め、体の芯から力を漲らせる。
それは古代小麦とトリュフの関係なのか。
小池シェフの考え方なのか。
トリュフの名産地、ウンブリアの人々の知恵なのか。
「採算を度外視してトリュフを使いました」と小池シェフがいう、「オステリア・デッラ・スクード」の「古代小麦を練りこんだマンフリーコリ 黒トリュフのペースト和え」。
今都内で最もいくべきだと思うイタリア料理店「オステリア・デッロ スクード」のウンブリア料理は別コラムを参照してください