10年ぶりの荻窪「四つ葉」。
都内有名すっぽん屋を数多く食べてきたが、この店は一線を画す。
従来は、すっぽんの臭みを、生姜と大量の酒と高熱で和らげ、滋味を出していた。
しかし独学で学んだ長谷川新は思う。
酒と生姜がすっぽんの持ち味を邪魔しているのではないかと。
そこで、徹底的にすっぽんのメカニズムを研究し、
試行錯誤の結果誕生したのがこの鍋だ。
一匹を二人で半分ずつ。
後ろ足、肩甲骨回り、首、前足、胸骨回り、骨盤周りの順に
食べていく。
写真は中でも、一番好きな肩甲骨回り。
赤い肉と白い肉、脂がほどよく交差し、噛めば噛むほどに味がにじみ出てくる。
鉄分の味、ほのかな酸味、ほの甘さ、猛々しさ、舌に溶ける脂。
全てが口の中に登場し、生命のしずくを滴らせる。
味がスープに逃げておらず、雑味や臭みを一切取り払ったすっぽんの純度がある。
多生物の命を絶って育まれていく人間の性を、体の隅々まで感じる。
そして、この後
三楽章からなる、驚異の“雑炊シンフォニー”が奏でられるのだ。
その話はまた
10年ぶりの荻窪「四つ葉」
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