豚博士とお会いした、
富士農場の桑原先生である。
富士の麓で、世界の6大品種(ランドレース、ヨークシャー、バークシャー、大ヨークシャー、デュロック、ハンプシャー)の原種を飼われ、さらに中国の野生に近い黒豚、マンガリッツァ豚も飼われて、掛け合わせによるL Y B豚やセレ豚も出荷されている方である。
先生の研究によると、豚のうまさ(肉質や品種)は、50%が原種豚によって決まり、飼料と環境がそれぞれ25%を占めるという。その理由を
世界の国民一人当たりの最大消費国はオーストリアで、二位がデンマークになり、日本は40位、オーストリアの5分の1である。
ちなみに、鶏肉は約60位で、牛肉は約80位になるというから、日本はまだまだ肉食後進国なのである。
いくらとんかつを食べようが、豚しゃぶを食べようが、生姜焼きを食べようが、欧米に比べると、食べていないに等しい。
輸出国大手は、アメリカ、カナダ、デンマーク、ブラジルの四国で、中間国は、中国、ベトナム、フィリピンとなる。
一方日本は、ロシアや韓国と並ぶ、輸入国である。
だがその中で日本の豚飼育は、世界とは唯一違うことがあると、先生は言う。
世界の農業は、1競争型、開発型(広大な国土と輸送力を持つ、米国、カナダ)、2開発途上国(広大な国土とコストでこれから伸びるブラジル、ロシア、インド、中国)、3成熟型(狭い国土ながら異次元的特化した競争力を持つオランダやデンマーク)の3つに大別される。
日本はどれにも属さない。
「美味しい豚を作ろう」。そう考えて飼育しているのは、日本だけだというのである。
もちろん日本にも、1競争型、2中間型もあるが、3銘柄型という品質追求、特殊品種交配、飼料・環境配慮型、産地特性活用という、独自の飼育があるのである。
かつて日本は、ブランド豚並びに、美味しい豚を作ろうという動きはなかった。
何しろ、日本では明治5年に天皇が牛肉を召し上がり、すべての日本人が牛肉に熱狂していた、明治16年時の豚肉消費事情は、寂しかった。
1年間一人平均4gである。
ほぼ食べていなかったに等しい。
しかし今は約20kgとなっている。
特にここ20年の躍進はめざましい。
ブランド豚や銘柄豚も、その頃から増え出した。
2007年DANCHUの第二特集で「豚料理」があり、そこに僕が書き下ろした記事にはこう書いている。
「編集部の調査によれば、人気のフレンチやイタリアンでは、2000年頃から豚肉料理を置くようになり、殊にここ一年で急増している」。
その記事でいくつかの店を紹介したが、革命的に品書きに乗せ、主役の座につかせたん二軒をクローズアップした。
98年末に開店した「ブーケ・ド・フランス」の井本秀俊行シェフと、99年当時青山「ラ・グロッタ」のシェフをしていた、寺内正幸シェフである。
この二人がやられていなかったら、豚肉のフランスイタリア料理店への進出は、かなり遅れただろう。
我々は世界に誇れる豚肉を食べている。
とんかつを食べながら、その幸せに浸かろう。