<豆汁に抱かれてVOL3>
豆汁の赤く透明な液体がワイングラスに注がれている。
鼻を近づけると、甘い香りが鼻先に触って、目を細めた。
これは茹で上がったばかりの枝豆の香りである。
熱々の枝豆をザルにあげ、立ち上る湯気に顔を突っ込んだ瞬間に包まれる、幸せの香りである。
豆の茹で汁にフレッシュな鞘を入れて作ったお茶だという。
赤いのは、赤飯と同じ原理で、豆の中にあるポリフェノールが溶け出した色合いである。
甘やかな香りが、鼻腔をくすぐり、「早く食べて」と囁く。
傍らには、八女茶の抹茶のグラニテと栗のムース、豆、刺激のない山奥の山椒で作ったアイスを重ねたデセールが添えられた。
お茶と豆、栗の甘みが呼応し、山椒の微かな痺れが、それらの甘さを引き締める。
そこへ豆汁を流し込む。
すると、自分がまるで鞘に包まれたかのように、ゆっくりと豆と同化していくのだった。
豆部部長伊藤くん、豆料理といってもいろいろあるのですね。
甘いデセールで新玉得て豆の力を思い知りました。
白金「Yama」にて