<今年初めて訪れた地方の店ベスト4>

食べ歩き ,

<今年初めて訪れた地方の店ベスト3>
1) 奥入瀬渓流ホテル 「ソノール」
世の中おいしい店で溢れている。
だからこそ、ただおいしいだけではなく、料理に文化の裏付けがないと意味がないと思うようになった。
この店では、青森の郷土料理、イガメンチ、いちご煮、道具汁、切り込み、南部煎餅などを、見事なまでにエレガントに仕立て上げ、フレンチに再構築している。
また洋食で加熱して扱うことが難しい、マグロ料理の未来を見せて驚かせる。
さらには、あん肝料理に温めたシェリーを合わすなと、ベアリングも秀逸。
そして、渓流を見ながらのアペロから、室内での食事、食後は外で渓流を感じながらのシガーとコニャックといった、他にはない、かけがえのない時間も待っている。
 
2) 浜松「勢麟」
例えばお馴染みのフグの煮こごりがある。
普通は、出汁と酒、醤油などで調味して作っていくが、この店は違う。大量のフグの皮と水、そして色づけに数的の薄口醤油で作る。
前者の方がうま味は強い、だが後者の淡いうま味は、純粋なフグの旨味だけで澄み渡っている。
それは、普段の生活で鈍っていた舌のセンサーを洗い、磨き、静かに感度を上げる。
昆布カツオ出汁を使わないシラカワとかぶらのお椀も同様、食材の汚れない味わいを感づかせてくれる力がある。
 
3) 京都綾部市「田舎の大鵬」
蒸した掘り立ての人参を食べた時、自分の体の中で、何かがカチリと音を立てて動いた。
ほくほくとした穏やかな甘さが舌に落ちた時、おいしいを超えた本能が目覚めていく。
人参への先入観や今まで食べてきた人参料理への記憶がすうっと消えて、そこには、素直に、純粋に喜ぶ自分がいた。
これが原初の「食べる」という行為なのかもしれない。
おそらく一人で食べていたら、涙していただろう。食べるという意味の根源を、問うて来る時間がここにはある。
田舎で、澄んだ空気の中で、樹々や野菜や動物など生物に溢れた空間で食
べてこそ感じることなのだろう。
感覚を研ぎ澄まし、精神を洗い、本来の人間と色の関係を感じるために、もう一度訪れたい。
 
4)飯田市「柚木元」
詳細は別コラムにて
 
次点で
軽井沢「NAZ」
大分湯布院「Jingu」今年四月に開店のためいれませんでした
札幌「ヴェージャフロール」東京でのイベントゆえにいれませんでした
静岡「日本料理Fuji」
金沢「雅乃」
京都 木津「リストランテナカモト」