肉の表面に、うっすらと肉汁が滲み出している。
「急いで口で吸え」。
その途端、スネークマンショーの小林克也の声が響いた。
人目を気にせず、肉に口づけする。
ちゅっ。
ほのかに甘い肉のエキスが、舌を這う。
箸で掴んで、噛む。
ああ、なんて味が濃いのだろう。
一回二回、そして普通は20回ほど噛むと、次第に味が薄くなっていくヒレ肉は、25回目くらいからさらに味が膨らんでいく。
噛め。もっと噛め。
肉から焚きつけられて、血がたぎり、鼻息が荒くなる。
始めていただく、様似ポークヒレ肉のとんかつである。
ジビーフの西川さんが育て、サカエヤ新保さんが酒粕などを使い、手当てしたヒレ肉がとんかつになった。
それはどのヒレカツとも違う味である。
とんかつ会議メンバーであるから、今まで夥しい数のヒレカツを食べてきた。
しかし噛んでいて、命の躍動を感じるヒレカツは、初めてである。
咀嚼するたびに、ポンプで豚の息吹を吹き込まれる。
食欲の根源が鼓舞される。
コーフンのあまり、ご飯を食べるのも忘れて、気がつけば皿は空となっていた。
名古屋「みとん」にて。