銀座 赤坂璃宮

鳩は

食べ歩き ,

鳩は、一人一羽でなければならない。
包丁を入れることなく、手で持って齧りつき、しがんで、骨までしゃぶりつかないと、いけない。
銀座「赤坂離宮」で、この昼のために梁さんが朝6時に店に出て、焼いてくれた鳩。
男三人が酒を飲むのも忘れ、わき目もふらず、無言で齧りつく。
鳩の血が、滋味が、命が、一噛みごとに体を巡り、精を炊きつける。
鼻息は荒く、唇が、歯が、獣のように活性化して、自らの機能を発揮している。
食べるごとに体が上気し、奥底に眠っていた野生が叩き起こされる。
鳩は優しいようでありながらも、猛々しく、我々の食欲という本能をあおるのだ。
弾けるようなモモの肉と脂、しっとりと歯を包む胸肉、パリッと砕ける皮の香ばしさ、そして脳みその誘惑。
ああ、ここに女性がいなくてよかった。
もしいたら襲っていたかもしれない。