鰻の醤油焼き

食べ歩き ,

「鰻の醤油焼き」を食べた。
普通は甘辛いタレである。
非常に珍しい。
江戸時代中頃まで、鰻は開かず、丸のまま塩焼きであり、開くようになり、醤油が普及するようになると、醤油焼きを経て酒と味醂を使ったタレ焼きとなり、定着したらしい。
食べて目を丸くした。
タレ焼きではふっくらとした腹側が、カリッと焼かれているではないか。
その小気味良い食感と、醤油が焦げた香ばしさが合う。
途端に、燗酒が欲しくなった。
途端に、白いご飯が恋しくなった。
醤油焼きを燗酒で迎え撃つ。
あるいは、醤油焼きを齧りながら白いご飯を掻きこむ。
たまらない。
聞けば最初は、蒸しても脂分があって醤油をはじいてしまったという。
そこで、焼き付けるように醤油を乗せていき、焦がさないように満遍なく焼き色をつけていく。
醤油を塗りながら、両面をひっくり返して、満遍なく炙ることにより、あの食感が生まれるのだという。
食感だけではない。
甘がない分、鰻が持つ脂の甘みが際立つ。
それゆえに酒やご飯が恋しくなるのであった。
日本橋「いづもや本店」にて。