<駅弁勝負 第108番>

駅弁 ,

730新宿発のあずさで甲府に向かっつている。

当然勝負の品は「田中屋」の「復刻鳥めし」てある。

「田中屋」は、かつて新宿駅の駅弁屋だつた。

しかし1986年3月3日。�いつものように新宿駅に着いた僕は、面食らった。

総武線で新宿駅に出て、同じホームの山手線内回りに乗って原宿に向かう。�これがいつもの経路だった。�乗り換えの、新宿駅10,11番ホームがいきなり12,13番ホームと名称変更されていたのである。�埼京線が出来たせいである。

まあそんなことはどうでもいい。�悲しかったのは、いつも利用していた店が消えていたことだった。

「田中屋」のホーム売店である。

出勤時に朝飯や昼飯用として買う二つの名物を、密やかな楽しみとしていた�それが忽然と消えてしまっている。

一つがハムカツサンドで、ソースが染みこんだパンに噛り付くと、カリッと衣に歯があたり、下品なソーセージの味が広がる。

揚げ立て衣の食感を残した田中屋の「ハムカツサンド」は、逸品だった。

もう一つが「鳥めし」である。

甘辛く煮た鳥そぼろと甘く味付けた玉子そぼろが、鳥スープ炊きご飯の上にびっしりと敷き詰め、グリンピースで彩った弁当である。�おかずは小さい鳥カツと昆布巻き、煮筍が入っていた。

30数年前は300円 1986年当時は400円。

鶏そぼろは、ほのかに生姜が効いていて、甘辛さを引き締める。

余計なおかずをつめない潔さと値段の安さを、愛していた。

品川駅「常盤軒」の「きじ焼き弁当」と並ぶ、東京名物駅弁だった。

お金のあるときは、10品ほどのおかずを詰めた「鳥重」600円にして、ささやかな贅沢を楽しんだなあ。

それが突然、買えなくなつた。

田中屋の売店は、中央線快速ホームやコンコース内の数店舗と、追いやられた。

出入り駅内販売業者の悲しさよ。�JRの客を省みない横暴よ。

明治に創業し、昭和32年に「鳥めし」を販売開始し、多くのファンを築いてきた田中屋は、こうして次第に隅へと追いやれていく。

やがて1991年、現NRE、元日本食堂に吸収合併され、単なる駅内販売会社となり、「ハムカツサンド」も「鳥めし」も消えた。�こ絶望の縁に立たされ、悲嘆にくれた人が幾人もいたことか。

しかし、2001年に復活した。�「復刻鳥めし」690円である。�以前の経木風弁当箱とは異なるが、デザインは変わらない。

おかずは、小ナスの醤油漬け、菜の花わさび風味に、大根桜漬けと缶詰のみかん。�そのシンプルやよし。

甘すぎないそぼろや淡い甘辛醤油ご飯との調和もいい。

隣は30玉井後半男性。ミックスサンドにお茶を飲み、スマホ見ながら食べている。

もうこの時点で、勝利。

復刻鳥めし690円

ご飯2おかず1 箸2 価格2 特記その他なし

総計7点

高崎の鳥飯、名古屋松浦商店の鳥めし、金沢駅の鳥めし、鳥栖のかしわめしと並ぶ五大鳥めし弁当。

駅弁勝負。

730新宿発のあずさで甲府に向かっつている。

当然勝負の品は「田中屋」の「復刻鳥めし」てある。

「田中屋」は、かつて新宿駅の駅弁屋だつた。

しかし1986年3月3日。�いつものように新宿駅に着いた僕は、面食らった。

総武線で新宿駅に出て、同じホームの山手線内回りに乗って原宿に向かう。�これがいつもの経路だった。�乗り換えの、新宿駅10,11番ホームがいきなり12,13番ホームと名称変更されていたのである。�埼京線が出来たせいである。

まあそんなことはどうでもいい。�悲しかったのは、いつも利用していた店が消えていたことだった。

「田中屋」のホーム売店である。

出勤時に朝飯や昼飯用として買う二つの名物を、密やかな楽しみとしていた�それが忽然と消えてしまっている。

一つがハムカツサンドで、ソースが染みこんだパンに噛り付くと、カリッと衣に歯があたり、下品なソーセージの味が広がる。

揚げ立て衣の食感を残した田中屋の「ハムカツサンド」は、逸品だった。

もう一つが「鳥めし」である。

甘辛く煮た鳥そぼろと甘く味付けた玉子そぼろが、鳥スープ炊きご飯の上にびっしりと敷き詰め、グリンピースで彩った弁当である。�おかずは小さい鳥カツと昆布巻き、煮筍が入っていた。

30数年前は300円 1986年当時は400円。

鶏そぼろは、ほのかに生姜が効いていて、甘辛さを引き締める。

余計なおかずをつめない潔さと値段の安さを、愛していた。

品川駅「常盤軒」の「きじ焼き弁当」と並ぶ、東京名物駅弁だった。

お金のあるときは、10品ほどのおかずを詰めた「鳥重」600円にして、ささやかな贅沢を楽しんだなあ。

それが突然、買えなくなつた。

田中屋の売店は、中央線快速ホームやコンコース内の数店舗と、追いやられた。

出入り駅内販売業者の悲しさよ。�JRの客を省みない横暴よ。

明治に創業し、昭和32年に「鳥めし」を販売開始し、多くのファンを築いてきた田中屋は、こうして次第に隅へと追いやれていく。

やがて1991年、現NRE、元日本食堂に吸収合併され、単なる駅内販売会社となり、「ハムカツサンド」も「鳥めし」も消えた。�こ絶望の縁に立たされ、悲嘆にくれた人が幾人もいたことか。

しかし、2001年に復活した。�「復刻鳥めし」690円である。�以前の経木風弁当箱とは異なるが、デザインは変わらない。

おかずは、小ナスの醤油漬け、菜の花わさび風味に、大根桜漬けと缶詰のみかん。�そのシンプルやよし。

甘すぎないそぼろや淡い甘辛醤油ご飯との調和もいい。

隣は30玉井後半男性。ミックスサンドにお茶を飲み、スマホ見ながら食べている。

もうこの時点で、勝利。

復刻鳥めし690円

ご飯2おかず1 箸2 価格2 特記その他なし

総計7点

高崎の鳥飯、名古屋松浦商店の鳥めし、金沢駅の鳥めし、鳥栖のかしわめしと並ぶ五大鳥めし弁当。