静かながら猛々しい。
穏やかな奥底に凄みがある。
それが「一椀水」南さんの料理ではないだろうか。
「豚肉の衣揚げと天然茸の蒸しスープ」は、茸の香りも豚脂のコクも、毛湯の滋味もすべてが一つとなって、太古から存在していたかのように自然である。
茸のぬめりと小さな小さな豚団子についた衣のぬめりが同調し、まろやかな湯が舌の上に転がって、体の隅々まで染み渡る。
そして。
胃袋の底から滋養の深さがわき上がる。
感謝の言葉がわき上がる。
「白菜と栗の煮込み　サフラン風味」は、白菜の香りとサフランの香りが抱き合って、なんとも艶っぽい。
栗と合わせて食べてみれば、ほっこりとした甘みが白菜の甘みと馴染み、去りゆく秋と来る冬への思いが、切なく心を温める