赤点だらけの自分の人生を戒め

食べ歩き ,

赤点だらけの自分の人生を戒め、30年前に、たった5席だけの餃子の店始める時、「赤点」と命名した。

餃子以外はやるまい、そう決めた。
餃子以外はビールしか置かない、そう決めた。

もう、主人は70歳をとうに過ぎている。
背中を丸めて餃子を焼きながら、年配の常連客と昔話を交わす。
6時や7時や8時には、5席を求めて行列ができる店も、
8時半過ぎれば、老練の独酌客が彼と話すのを肴に、じっとりと飲める。

餃子は、白菜の甘みと豚肉の甘みが、自然に溶け合って、一口で、笑いたくなる。
普通のすごさが、ここにある。

最初は酢だけで。
次は酢醤油で、次はラー油を入れて。
最後は、この店特有の甘い味噌を溶かして。

餃子1人前210円。7個。
ビール中瓶480円。
餃子2人前とビールでゆるりと始めた。

話は原発の話だった。
いきなりご主人が
「あちらにご親戚はいらっしゃならかったのですか」と聞くので、いないと答え、でも元部下の親戚が大変ですというと、柔和な顔に悲しさを陰らした。

僕は、餃子を、口いっぱいにほおばりながら、実直な生きる喜びを噛みしめた。

高円寺「赤点」。