ふんわりうなぎが崩れれば、柔いご飯が受け止める。
1700円のうな丼は、古くから庶民に愛されてきた。
「土壌蒲焼や鯉の洗いもやられていたのですね」。
店内に掲げられていた古い品書を見て、そう聞けば
「10年くらい前までは人をいっぱい雇って、昼夜精力的にやっていたんです、でも主人が怪我してから昼の数時間だけで料理もコンパクトにしました」。
そうおかみさんは、朗らかに言う。
十二匹分くらい入って、生姜の千切りと青柚の千切りが入ってた「肝煮」、おいしうございましたと言おうとしたら、老人が入ってきた。
推定80歳くらいだろうか?
「あらお久しぶり」と、女将さん。
「ああ久しぶり、すっかり年取っちゃったからね」。
「みんなそうよ」と、女将さん。
「いつものでいい?」
「うん、お願い」
「ご飯の量は変えなくても?」
「うん、お願い。そういえば〇〇さん亡くなっちゃってねえ。ありゃ寅年だ」。
「あら私も寅年」
「そうかい、〇〇さんは昭和13年生まれだった」。
「いやだ私は、その二まわい上ですよお。ハハハ」。
そんん会話が似合う店っていいな