中国料理店で「海鮮そば」や「海鮮やきそば」を頼むことは少ない。なぜなら、エビやイカ、貝類などが盛りあわされて、一見豪華そうに見えるものの、海鮮とはほど遠い質であったり、調理の仕方が雑であったりするケースが多く、失望させられることが多いからである。しかも海鮮と名がつくだけで、値が高くなってしまう。
しかし「星福」の「薬膳海鮮つゆそば」は違った。主役のホタテ、イカ、エビそれぞれが、やや半生の状態で精妙に火を通してある。質も高く、噛むと本来のエビやイカの甘みやホタテの滋味が口いっぱいに広がって、それぞれの香りが立ち上る。そこへ品の漂うスープと麺がからむ。これぞ海鮮とうたうにふさわしい湯麺だ。
さらにこの店は薬膳料理を中心とした店であるから、棗、クコ、金針菜、白きくらげと、滋養や肌に効能のある素材がたっぷりと入れられ、野菜類も、小松菜、山クラゲ、木耳、アワビ茸、椎茸、人参、筍と、実に豊富である。豊富なだけではなく、意味があり、全体のバランスも取れている。
三種類の魚介の持ち味を楽しみ、野菜の異なる食感や香りを楽しむ。一つの丼に様々な魅力が詰め込まれていて、飽くことが無い。食べ終われば、薬膳効果だろうか、体が上気してぬくぬくと心地よい。
薬膳ということもあって、昼時はほとんどが女性客だが、これからは体力が失われやすい季節である。ぜひ男性にもお奨めしたい店である。