そこには茄子の純粋があった。
噛もうとすると、歯が優しく茄子に抱きすくめられる。
どこまでもきめ細かく、すうっと歯が入ったかと思うと、ほの甘いエキスがポタポタと舌に滴り落ちた。
「惚れてもいいよ」。
茄子にそう言われたようで、頬が赤くなる。
人の手によって調理されているのに、誰の手に触れられないで、茄子自身が自らに熱を入れ、うま味を増したような自然がある。
この茄子は、揚げたのだという。
しかし揚げ茄子のように、油は茄子に一切入ってない。
焼きなすのような香りはなく、水分の流出もない。
真空調理された茄子のように、今朝取れた茄子は、まだ畑で成っているままでいた。
「片折」にて。
茄子の純粋
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