「神田まつや全メニュー制覇への道」花巻そばの巻

食べ歩き ,

#神田まつや」全メニュー制覇への道。残り14種類
<花巻そばのいただき方>
まず燗酒をお願いしておこう。
運ばれてきたら、蓋を少し開け、香りを嗅ぐ。
2回、嗅いでは蓋を閉め、その香しさを胸一杯に吸い込んで、燗酒を一2杯飲む。
次に蓋を開けて、その神々しいお姿に目を細める。
この光景に敬意を表して一杯。
次に、海苔を丼の縁に寄せ、吸い口にして、一すすりする。
甘汁の、こっくりとした江戸風甘辛さが舌に広がり、喉に落ちかかる頃に海苔が香る。
次に海苔を箸にて細かく千切る。
わさびは最初に入れる方もあるが、僕はそうしない。
わさびの香りが甘汁に負けてしまうからである。
それゆえに、千切った海苔の上に、毎回少しずつ載せては、そばをたぐる。
すると、甘汁から海苔、わさびの順で、味わいが流れてゆく。
あるいは、そばをたぐったら、すかさずわさびを少し口に含むのも良い。
こうして食べながら、また燗酒をいただくのがよろしい。
この花巻そばというものは、燗酒との相性が、誠によろしい。
互いを盛り立てながら、時が過ぎてゆく。
蕎麦は全部食べてはいけない。
一本くらいを残しておく。
食べ終えたら、そこに蕎麦湯を注ぎ、それを楽しみながら、また燗酒をやる。
甘汁は、他の種物では飲み干さない。
唯一例外は、花巻そばである。
蕎麦湯を注いだ花巻そばのつゆは、、少なくなってきてから本領を発揮する。
下に溜まった海苔のかけらが、つゆの味わいを、深く、深く、膨らますのである
海苔のうまみとつゆのうまみが渾然一体となって、押し寄せる。
1本残して柔らかくなった蕎麦もまた、汁を吸って、愛おしい。
最後の酒を一杯飲む。
その時しみじみと、「うまいなあ」と、呟くのである。