芋としての甘えが一切ない

食べ歩き ,

何気なく食べて、目を見開いた。
この写真だけを見て、即座に「いいね」を押す人も少ないだろう。
ジャガイモがどこまでもみずみずしく、シャキシャキと軽快な音を立てる。
芋としての甘えが一切なく、ごま油の香りにまみれて、清冽な水気が弾け飛ぶ。
「新じゃがきんぴら」である。
こうしてシンプルな料理が、想像を超えると、なんとも嬉しい。
「三日間水にさらして、太白でじっくりと炒め、とびこと胡椒であえています」と、誠実そうなご主人が答えられた。
その瞬間、「通ってしまうな」と思った。
さりげないが、手がかかっている。
とびこの塩気が、程よくじゃがいも甘みを生かしている。
「蛸やわらか煮」、「花わさびしょうゆ煮」、「実怜風ポテトサラ」「うすい豆すり流し」。「唐すみ大根」。
「いわしオイル漬」。「鯛とさよりのお造り」。「筍焼き」。「このわた茶碗蒸し」。「白甘鯛唐揚げ」。「丸唐麺」。「穴子ごぼう」御飯
品書きだけ見ると、他店にもある料理で想像できるようなのだが、一品一品かすかな独創があって、驚きが込められている。
そういうとこに、タベアルキストの食いしん坊心はくすぐられちゃうんだよねえ。
これは通ってしまうなあ。
京都にて

「実玲」