肉を焼くということは

食べ歩き ,

肉を焼くということは、本来は食べやすくするためのものである。

人間は、焼くということによって、風味を発見し、栄養を吸収しやすくし、脳を巨大化させていった。

しかし、プロが焼くとこうだ。
渋谷「ゆうじ」で、肉を焼くプロが、ハラミとタンの厚切りを焼いた。
味と香りに対比を生み出すこと。香りを複雑化すること。肉汁を熱くたぎらせ、中に閉じ込めること。脂を溶かすこと。余分なアクや脂は出すこと。焼きムラをつけぬこと。
肉に火が入っていく過程を見極め、完璧な状態に仕上げた作品がこの二つである。
ハラミに歯を立てれば、カリッと小さな音が響いて、歯は肉にめり込んでいく。
香りが食欲をあおり、肉汁が内なる野性に火をつける
方やタンは、軽く焦げた表面の香ばしさの中から、優しい甘みが滲み出る。
いずれも「肉を食らっているぞー」と叫びたくなる、勇猛な味わい。
高いレベルでの再現性を目指すのは、スポーツでも料理でもそう。
それをプロという。職人の仕事である。