肉の血の味は

食べ歩き ,

肉の血の味は、銘醸ワインと合わせると、新たな宇宙へと登っていき、第三の官能へと誘い込む。
そのエロスは、自然を制御し制覇してきたキリスト教徒の執念だったかもしれない。
我々は、その執念に酔い、エッチだなあと笑う。
しかし昨夜飲んだワインは、明らかに違った。
噛め、噛めと叫ぶ、肉汁滴る馬のハラミステーキを噛みしめ、ワインを飲む。
するとどうだろう。
濃密な山葡萄を感じさせるそのワインは、馬の血肉とすうっと同化した。
馬の滋味が深まるのでもない、変化するのでもない、新しい宇宙を創るのでもない。
口の中に、馬とそれを育んだ土地の光景が浮かび上がる。感謝がせり上がる。
こんなマリアージュがあるのか。
新たな世界を作るのではなく、プリミティブな世界へと戻って、自然への敬意を感じさせるマリアージュ。
ああ、世界は、変わりつつあるのかもしれない。
Sylvain Martinez Corbeau
「ラ・ピヨッシュ」にて。