どこからどう見ても、普通のカツ丼である。
やや色黒なことをのぞいては。
箸でカツをつかんで噛み、ご飯を掻きこむ。
その途端、体の底に眠っていた下品好きが、覚醒した。
普通のカツ丼ではない。
「卵とじソース煮カツ丼」なのであった。
ソースカツ丼ではない。ソース「煮」という点が憎い。
どうやら甘辛い醤油味に、ウースターソースを加えて、玉ねぎを煮、さらにカツを入れて煮、最後に卵で閉じたと、読んだ。
醤油とソース、さらに砂糖という、旨味三大王が染み込んだ玉ねぎのうまいこと。
この褐色色した玉ねぎだけでご飯が恋しくなる。
さらに所々茶色く変色した玉子がいけません。
三大旨味が卵の甘みに溶け込んで、鼻息を荒くさせる。
カツは、乗せられたままま口に運べは(つまり煮汁に浸かっている方)、ご飯を欲し、上面を舌に当てて食べれば、濃いタレ味に対しての、リフレッシャーになる。
不思議なことに、食べ進んでいくと、下の方は煮汁に染まっているのに、中間部は、白ごはんのまんまである。
なぜかはわからない。
だが底部の焦茶色ご飯が下品の極みで、これを食べて即、白いご飯を掻きこむという、ご飯オンご飯という、禁断の縮図ができがるのであった。
松本「お食事処 高橋」にて。
ちなみに後ろに写りしは、馬刺しと馬モツ煮込み。
卵とじソース煮カツ丼は、味や仕立て方違いで、飯田「満津田食堂」や湯田中温泉の「松美食堂」にもあるという。