粘膜が恋するチーズケーキ

食べ歩き ,

粘膜が恋してしまうチーズケーキである。
口に入れると、ねっとりしっとりと、口腔内の粘膜にしなだれる。
噛むまでもなく、舌と上顎でつぶす。
そしてそのまま口を動かしながら、目を閉じ、鼻から息を吸い込む。
するとチーズの香りがふんわり広がって、その影から柑橘の香りが静かに漂い始める。
舌の上に乗せたチーズケーキのコクから、気品が流れ出す。
その余韻に合わせて、ダージリンをいただくのよかろう。
その余韻に合わせて、ワインを飲むのもよかろう。
写真のそれは、おそらくロックフォールから作ったチーズケーキであるから、赤ワインが合った。
かな濃密なチーズケーキである。
今まで食べたチーズケーキの中でも、極めてチーズが豊かである。
その濃密が口腔内の粘膜という粘膜を、優しく舐めまわし、「ああ」と思った瞬間、香りだけを残していくのだからたまらない。
これはチーズケーキという名前の“夢”である。
長谷川稔さんは、頭中に描いたこのチーズケーキの理想に向かって、1500回近く試作を繰り返したのだという。
今食べ終えて一時間半が経った。
僕の心の中にある欲望は、「また食べたい。一口だけでもいいから、お願い」と言っている。
だから売り切れらしいが、再開してね。