神様ごめんなさい。

食べ歩き ,

神様ごめんなさい。またいけないことをしてしました。
札幌「ル・ミュゼ」の特別15皿コース、その中のフグづくしがいけません。
まず増毛の国稀純米吟醸に炎をつけ、そこに七輪で炙ったばかりのふぐヒレを沈めます。
それだけならまだわかる。でも石井シェフはそこにトリュフを削り落とすのだからいけません。フグヒレから滲み出たうま味のエキスが酒に溶けはじめた頃合いに、淫靡な香りが顔を包みます。
まあそれだけならまだわかる。でも石井シェフは、半分ほど飲んだら鮭節とフグのコンソメを注ぎ混ぜ、さらにトリュフをかけるんだもの、これはいけません。
黄金色のうま味が舌を通り過ぎる中、トリュフの香りが鼻孔にへばりつき、もう僕は陶然となって、どうしたらいいのかさえわかりません。
さらに「てっさ」は、キャビアの塩気とトマトジュレの酸味とうま味とあわせ、フグの煮こごり、つまりフロマージュ・テットですね、には、酸味を利かせたラヴィコットソースを添える。とうとうみには、ハーブヴィネガーを注ぎました。
そして再び危険はやってきました。
白子のフリットは、目の前のパンで焦がしバターと合わせ、皿に盛ったら、またトリュフを降らせます。
ごめんなさい。ゴメンナサイ(誰にだ)と言いながら食べた白子は、ヌルンフワンと溶けゆく中に濃密な精の甘みがあって、鼻息を荒くさせる。
そこへトリュフだもの。もう妊娠するかと思いました。
でも不思議なことに白子が勝つことなく、かといってトリュフ香が勝つことなく、両者は仲睦まじく抱き合い、我々の精神を勃起させるのです。
なんてことを書くなんて、この二つの食材に、僕は化かされていたのかもしれません。
最後はフグのロティに、先ほどのフグのコンソメをさらに煮詰めたものがかけられます。
このコンソメがおそろしい。うま味だけを極めて、いやらしさが微塵もない。
ピュアなうま味がフグを包んで、昇天させます。
ああ、なんと罰当たりなことをしたのでしょう。
石井シェフ、あなたはほんとうには罪作りな人です。
でも大好きです。