朴訥な豊穣。

食べ歩き ,

白い霙が唇に触れて、熱く、ふうわりと舌に流れ込む。
「ほくほく」。
霙は一瞬にして消えていくが、その刹那に囁いた。
大地の養分を吸い込んだかぶらの柔らかい甘みと、ほのかな辛味が広がり、細胞に行き渡っていく。
ぐじの滋味が、そっと顔を出す。
穏やか余韻に目を閉じれば、安寧が訪れる。
無言の平和が訪れる。
その朴訥な豊穣は揺るぎなく、冬への感謝を深めていく


「かぶら蒸し」は、「浜作」の初代が京都に店を移してから考案した料理だという。
「かぶらはおろしてから、5分以内に作らなあきません」。
かぶらは、すりおろされ、蒸されたのを、まだ気づいていないのに違いない。
そう思えるほど、かぶらのみずみずしい命が、味に宿っている。
「合わせるのはぐじだけ。銀杏やゆり根など余計なものは入れません」。
里の白と海の白が手を結んで、純粋を生む。
かぶらとぐじの密愛が、僕らの心を焦らす。
焦らし焦らして、幸せを満たしていく。

祇園「浜作本店」にて。