日本橋「たいめいけん」

煮 豚 ラ ー メ ン 九百円

食べ歩き ,

「たいめいけん」は、昼時になるとすぐに行列ができてしまう。
それもそうだ。どの料理を食べてもうまく、適価で、サービスがいいとなれば、混むのは当然である。
それに、今でも五十円であるボルシチとコールスローをサイドオーダーすれば、腹もしっかり膨れるというものだ。
行列と聞くと嫌がる人もいるが、今日は香ばしく揚がったメンチカツやビーフコロッケにしようか、いやいやたんぽぽ風オムライスやカレーもいいぞ、と悩みながら待つのも楽しいものである。
しかし今日は、そんな行列を横目に見ながら、建物をグルリと回って横の路地に入ろう。

目ざすは、五人も入れば満席となる、「たいめいけん」の立ち食いコーナーである。
洋食屋「たいめいけん」は、おいしいラーメンも食べられることで知られる店だが、ラーメンは昼の混雑時(十二時〜一時)に限り、この立ち食いコーナーでしかいただくことができないのだ。
厨房の真横に設けられた立ち食いコーナーでの食事は、ちょっとせわしないけど、大鍋で煮込まれているカレーや、オムライスを作る巧みな鍋さばきを眺めながらの食事というのも、中々おつなもんである。
さてそこで何を頼むかであるが、是非お奨めしたいのが、今年より新たにメニューに加わった煮豚ラーメンである。
「たいめいけん」のラーメンといえば、紅い縁取りの焼豚が思い浮かぶが、この煮豚ラーメンには、茶色く煮込まれた豚肉が五枚のっけられている。
注文が入ると、スープで三時間ほど煮込んだ豚肉の固まりを取り出して切り、器にラーメンのタレとスープを少量入れて、その中で切った豚肉を温める。
それから麺を茹で、スープを張り、豚肉をのせて、肉が浸かっていたスープを少し入れ、最後に万能ねぎの小口切りをたっぷりとのせる。
トロリと柔らかくなった豚肉は甘く、そこに醤油味のやんわりとしたうまみを持つスープと、コシが強く口当たりのいい細い縮れ麺が絡む。焼豚の噛み締めるうまみと違って、とろける豚肉がスープのうまみと口の中でなじんで、おいしさを膨らませる。
しかもラーメンより腹にドスンと座って、「ああ食べたぁ」。という充実感に満たされる。
豚肉好きなら、ぜひ一度試されたいラーメンである。