潔い。
実に潔い。
品書きは、「焼肉」の1人前から3人前までのトリプルしかない。あとはご飯以上。
あ、一応ラーメンが書かれているが、30数年通う常連も、食べている人を見たことがないという。
注文は、焼肉とご飯の量を申告するだけで、待つこと10分で現れる。
ジュッジュワー。
壮絶な音と湯気を立て、そいつは現れる。
だがその前に、テーブルに用意された小さな棒を縦に置く。
鉄板皿が運ばれると、皿の片方を棒に乗せるようにして傾ける。
キャベツと豚のハラミを炒めた「焼肉」である。
傾けられた鉄板の下部にたまった炒め油に特製辛子ダレを入れて溶くようにし、全体にまぶしていく。
韓国唐辛子の甘い香りがする辛子ダレには、味噌とニンニクと唐辛子が入っているのはわかるが、他は企業秘密らしい。
店内で調合しているのだが、膜を張って見えないようにしている。
このレシピを譲り受けるには、一千万円が必要だという。
このタレがクセになる。荒っぽい味だが、食欲をキックするたくましさがあって、キャベツと豚肉と絡むと、皆猛然と白ご飯を掻き込み出す。
単純だが深い。 そこに強みがある。
オーナーはそのことを熟知しているのだろう。常習者が増えていく。
ご飯の上にかけて丼にしても、これまた危険である。
どこにでもありそうでない、南福岡雑餉隈「びっくり亭本店」の焼肉を、
今日も男、男、男たちが食べている